名前のない怪物 2018-02-11 - ほりかわの日記


_ 名前のない怪物 2018-02-11

悲嘆の門(上) (新潮文庫) 宮部 みゆき(著)
新潮社 2017-11-29
エントリ一覧 詳細ページ
悲嘆の門(中) (新潮文庫) 宮部 みゆき(著)
新潮社 2017-11-29
エントリ一覧 詳細ページ
悲嘆の門(下) (新潮文庫) 宮部 みゆき(著)
新潮社 2017-11-29
エントリ一覧 詳細ページ

ある人曰く、

宮部みゆきは、人物を描くのに長けているといつも思う。

登場人物の一人一人が『どこにでもいるタイプ』であり、時には隣の席に座っていても違和感がない程のリアルさを感じる。どのキャラクタも、その人なりの信念や正義を持ち、あえていえば、その部分だけが作り込まれた事を感じさせるが、それでもそれらが私達の『誰もが少しずつ持っているもの』である為に、反発よりも親しみの方を強く感じる。

今回の『悲嘆の門』も、そういう人物ばかりが出てくる。一人一人が、少しずつ、私自身や私達の周りの人に似ている気がする。

それだけで物語はリアルさを増し、読み手の中で身近になる。本の中で起きた事件に対し、登場人物達と同じように、悲しみ、怒り、苦しむ。

その部分だけ見れば、『悲嘆の門』(上)は、久しぶりに面白いと感じて読み進められた。事件のトリックや犯人が誰であろうとも、この物語が面白いと言えるのではないかと思っていた。

感情移入出来る物語であれば、事件の仕掛けなどは些細なものである気がしていた。

しかし、最後までその気持ちを維持する事は難しかった。 結局、私は物語に身を委ねているつもりでいながらも、本当の意味では委ねきっていられなかったのかもしれない。

それは、今までの宮部みゆきへの高い評価に基づく、私の期待の現れではあったのだけれど。 物語る力が強ければ強いほど、僅かな破綻も見過ごせなくなってしまうものなのかもしれない。

今後は本屋で帯だけを見て、宮部みゆきを買うことに躊躇うであろう自分を残念に思う。