祈り。 2005-07-11 - へびあし。


_ 祈り。 2005-07-11

ずっと、心の底で忘れられない思い出がある。

生まれて初めて、一番の痛みを覚えた日の事だ。

私は、その痛みを乗り越えるために、会った事もない人を、心の底から呪った。そうしなければ、私は自分を守れなかった。

そうしなければ、私は「疑い」で足元を失う事になった。自分を傷つける「疑い」と引き換えに、相手への「憎しみ」を使った。

幼い心で、この世でもっとも強く、汚く、呪った。その汚さは、忘れない。思い出すだけで、吐き気がするほどだ。

そして、その事は何度も、何度も私の心に飛来し、苦しめた。しかも、その度にその人をまた呪ったのだ、私は。

何年経っても、十何年経っても。ずっと。何度も、何度も呪った。

そうする事で私は直接的に傷つきはしなかった。「疑う事」ほどの痛みも背負わなかった。

ただ、同じ運命を辿った。自分が呪われる運命。幼い私が呪った相手は、同じ運命を辿った私自身だった。

なのに、それでも、私は悟れなかったのだ。ずっと。

今日、初めて、その人に詫びたいと思った。その人が今、幸せであればいいと思った。

幸せでなければ、幸せになって欲しいと思った。幼い時に負けない強さと純粋さで祈った。

それは、そうありたいという、自分への祈りもあった事を私は否定しない。

私が祈った相手は、その人だけではなかったと思う。打算的な考えは、一切、まったくなかったけれど。

「疑い」や「憎しみ」は何も生み出さないと私は知っている。

そこで失うものの多さも分かっている。長い期間、苦しんできた。

これ以上は、もうたくさんだ。

なのに、小さな疑いの芽を、私はすぐに摘むことが出来ない。その強さは持ってない。

だから、それが心の中にある間は、私は血を吐くような日々を続けるだろう。

でも、自分の吐く血など、どうでもいいのだ。そうやって、また相手を追い詰める自分が嫌なのだ。

私は私を助ける事が出来ない。今はまだ。

私がそれを学ぶまで、私を助けて欲しいと心の底から願う。祈る。

目に見えない、何かに。