憂う。 2004-12-19 - へびあし。


_ 憂う。 2004-12-19

毎日、何時間もパソコンに向かっている。

うちは2台パソコンがあるので(正確には3台あるが、残りの1台はキッチンにある)、2人が横に並んでパソコンに向かっている。

事務所みたいだ。

2人の間に会話はない。

うちの本当に面白い人:Qちゃん(仮名)は、無言でパソコンに向かい、びっくりする勢いでキーボードを叩いていたかと思うと、たまに「OH!Fuck!」とか呟いたり、「OH!My God!」とか叫んでみたりして、本当に面白い。

うまくいった時はひとりで拍手をするので、聞かなくてもうまくいっている事がわかるので、基本的に会話も必要がない。

なぜ、英語なのか分からないが、プログラムは横文字の世界なので、どっぶり浸かっていると金髪になった気分になるのかもしれない。

もっとも、そんな当の本人はとっても日本人顔だ。

パソコンのそばに鏡を置く事を検討する今日この頃。

そんなQちゃんを横目に見ながら、パソコンに向かう。

文章を打ち込む時は、もちろんその文章のことを考えているのだけれど、パソコンを使って頭を使わない作業をする時は、大抵違う事を考えている。

昨日は、ちょっと悲しくなる事を考えながら家計簿を付け、独り言を言っていた。

言いながら、どんどん悲しくなって、何だかとても辛くなってしまった。

私の力でどうしようもない事はたくさんある。

「私に出来る事」をやるしかないのだけれど、でも突然「与えられたり、取り上げられたりする」その理不尽さや今までの気持ちを思ったりするとやるせない気持ちになってしまったのだ。

「どうしようもない事」が起こった時にいつも思うのは、「最悪の事態の時」に自分が納得できるだろうか?自分が納得できるベストを尽くしただろうか?という事だ。

他の人は関係ない。自分の基準で計り、自分の基準で見ることしか出来ない事だってあるのだ。

その基準でしか修められない事だってあるのだ。

だから、私はいつもそう考える。

そう思った時に今の状況はちっとも納得がいかなかった。

この件に関して、少なからずとも影響を受けるにも関わらず、私は「蚊帳の外」だった。

このまま、事が収まったとしても、私はきっと納得しない。

最悪の事態の時に、私はとても後悔するだろう。

それでも、今の私に出来る事は何もない。

ここで正論を振りかざしたとして、あの時に「こうしていればよかった」と言ってみたとして、何も事態は好転しない。

だから、黙っているしかないのだ。

黙って、これ以上の負担を当事者にかけないように、自分の生活を守っていくしかないのだ。

そんな時は、黙って勝手に悲しんだりするしかない。そして、この瞬間の悲しい自分を殺して埋めてしまうしかない。

「どーしたー?お酒飲んで休憩する?」

ご飯だよって呼んだって気付かない。

爆音でCDが鳴っていたって気にならない。

そんな風に集中してパソコンに向かうQちゃんが声をかけてくれる。

よっぽど大きな声で独り言を言っていたのかもしれない。そうなんだろう、きっと。

それでも、こんな時にこうして声をかけてくれるのが嬉しい。

「どうして泣くのか?」とか今は説明できないような事を聞いたりしないで、ただそばにいてくれるのが嬉しい。

だって、説明なんて出来ないし、したってつまらない事なのだ。

意味なく悲しい涙だってあるという事を知っている人と巡りあった幸運に感謝している。

私とQちゃんは、年齢も育った場所も趣味も学んだ事も性別も違う「他人」だ。

「他人」って突き放す言葉ではない。だって、「他人」だから、感謝を忘れない。

そして、「家族」はいつだって「他人同士」から構成されている。

初めは誰だって、「他人同士」だったのだ。

どんな事だって、本当のリセットは出来ない。

結婚が決まって、「今が一番いい時だよ」と言われる。

それも本当に悲しい事だ。

だって、結婚は日常だ。これから死ぬまでの時間を積み重ねていかなければいけないのに、「今が一番」だなんてつまらない。

そう言われる度に思う。

今、失おうとしているものもそうだったのだろうか。

一瞬しか一番がなく、誰かがどこかでその事を失ってしまったのだろうか。

大事にしようと誓った気持ちはどこに行ってしまったのだろうか。

本当にリセットしてしまえると思っているのだろうか。

どうやったって元に戻らない事が、そんなに世の中にたくさんあると思いたくない。

話し合えば、向き合えば、その時間を持つ気持ちがお互いにあれば、元に戻らなくても新しいものをもう一度一緒に作る事だって出来るのだと信じたいのだ、私は。

目の前に相手がいれば、憎いこともあるだろう。

目の前に相手がいれば、出来る事もあるだろう。

でも相手を失ってしまったら、何も出来ない。

相手を永遠に失ってしまってから気付いたって遅いのだ。

その事を思い出してくれることを心から祈っている。