_ 自転車の思い出 2002-05-22
夕方、ついに雨が降り出した。
憂鬱な気分で傘をさして歩いていると、自転車に乗った母と子が走っていく。
母親は小雨に打たれながら、自転車をこぐ。
前に二、三歳の子が乗っている。
母親はタオルでその子を庇いながら、時折顔を拭いてあげたりしながら、自転車をこぐ。
後ろにも五歳ぐらいの子が乗っている。
その子にも雨よけに頭にタオルが載っている。
その子はタオルを自分で、押さえる事もせずに、無造作に頭に載せている。
その姿は、妙に昔の自分を彷彿とさせる。
母もよく、あんなふうにして私たちを買い物に連れて行ってくれた。
弟は前に。
私は後ろに。
前の位置だと否応無に母の目に止まる。
幼心に、私にはそれが不満だった。
母が弟ばかりをかまっているような気がしたものだ。
だから、今日見かけた子と同じように、雨でタオルをかぶせられたりしても、かまってもらいたくてわざと、自分で自分をかまったりしなかった。
そんな事を思い出して、後ろの子に「頑張れよ」と声をかけたくなった。
昔の自分が走り抜けたような気分になった。
自転車に思い出話には、こんな話もある。
母は、坂道になると必ず私を自転車から下ろした。
私は母の「お姉ちゃん、下りて~」という声で自転車を下りる。
ある時、私は下りている途中で、足をもつれさせ、自転車から転げ落ちた。
ただ、落ちただけなら良かったのだけれど、近くの草むらに落ちてしまった。
運悪く、枯れ木が頭に刺さり、頭に三針を縫う大怪我になった。
あとで母が語ったところによると、病院で痛がる私を見ていられずに目をそらした母にお医者様は(キズの深さを測るのに、私の頭に針金のようなものを刺したままの状態で)「あなたの不注意でお子さんが怪我をしたんだから、目をそらしたらいけないでしょう」とおっしゃったそうである。
走っていく自転車を眺めながら、「お姉ちゃん」にエールを送りつつ、思わず頭に手をやってしまった。
私の知能とこの怪我の関連性は、・・・・ないんだろうなぁ。
by ミズキ