_ 流れ 2002-01-15
時の流れについていけないことがある。
以前に比べ、随分と自分の時間がとれる仕事をしているにも関わらず。
時間が足りない、というのとは、ちょっと違う。
上手くついていけないのだ。
その流れに。
体が。頭が。思想が。思考が。
エスカレーターのような時の流れに、足を乗せるタイミングを逸して、立ち止まっている。
前へ、前へ。
すいすいと時間は流れていく。
私はそれを見つめながら、右足を先に出せばいいのか、左足から出せばいいのか、ずっと悩んでいるのだ。
事の始まりは、先日のことだ。
右足を先にしようとしたら、左足から異議が出たのだ。
幼稚園のお遊戯会のダンスも右足が先だった、というのである。
それで左足を先にしようとすると、左足の意見をいつも優先して左足には甘すぎると右足が言うのだ。
どちらも私のかわいい足である。
平等に扱いたいと思うのだが、どっちを先にしても角が立つ。
ちょっというと、そんな感じだ。
折り合いが難しい。
そうして、座り込んでいる。
前の方で「以前の自分」が、過ぎ去った流れに『無駄に過ごした時間』とラベルを貼っている。
せっせと、せっせと貼っている。
きっと彼女は、すこぶる怒っているので、そのうち私に伝書鳩を飛ばしてくるかもしれない。
「バッカジャナイノ?トビノレバイイジャナイ!」(名案だ。左右の足も納得するに違いない!)
電報でも打ってくるかもしれない。
「ナニガシタイノ?」(結婚式の引き出物のような的確で無駄のない質問!)
糸電話もひいてくれるかもしれない。
「イイカゲンニシロ!」(ピカピカに磨き上げられたファミリーレストランのナイフのような実用的で鋭利な文句!)
最後には、きっと空き缶を投げつけられるだろう。
私はわりとコントロールはいい方だったから。
いや、地球に優しく賢明な彼女ならきっと、空き缶は投げない。
豆腐を投げてくれるだろう。
「トウフノカドニデモアタマヲブツケテオキナサイ」
by ミズキ