_ ドアの向こう。 2001-12-07
毎日、いくつかのドアを開く。
ドアの前で、戸惑い、躊躇し、一度通り過ぎ、引き返し。
場所と構えと気分によっては、そんな一連の動作をしてから、ドアを開く。
何度やったって、ちっとも慣れない。
緊張と少しの期待。
ドアの向こうには未知なる人が、未知なる生活を営んでいる。
このドアが私と未知なる人の境界だ。
ドアを開くと、未知なる人との境が消える。
繋がっていく。
未知との遭遇。
もしも通り過ぎてしまっていれば、繋がらない時間。
存在しない会話。出会い。
そんなことを日に何度も何度も。
毎日毎日、繰り返す。
数秒で終わってしまうこともある。
一時間以上も話し込むこともある。
二度と会わないであろう人もいれば、お互いを知ることを重ねていく人もいる。
一回もドアを押せない日もある。
日に何十回と開けることもある。
立ち止まって、座り込んだりする日だってあるけれど、私は「ドアを開ける」作業が好きだ。
同じドアを開ける回数が増えるたびに、ドアの重さが軽くなる。
そのことを自覚する瞬間が好きだ。
ドアの向こうにいる人の事を思って、無意識に笑顔でドアを押している自分に気付いた時の、気恥ずかしい瞬間が好きだ。
だから、私はドアを開ける。
何度も何度も、ドアを開ける。
その向こうに迎えてくれる笑顔が作りたくて。
未知なる「あなた」に会いたくて。
by ミズキ