「人間って、何でも食べるよなぁ」
食事中に同席者が呟いた。
そういわれればその通りで、地球全体の規模で考えれば、人間が食べないものはないんじゃないかという気がする。
「でも、人間自体は美味しくないって、理不尽ですよねぇ」
思わず、食べたこともないのに、口にしていた。
そう、人間が唯一食べないものがあるとすれば、それは「人間自身」だけであろう。
私の何気ないひと言から、倫理的なことは置いておくとしたら、果たして人間は美味しい食べ物であろうか、と話は流れていった。
結論。
魚のような泳ぎも出来ず、鳥のように飛ぶことも出来ず、犬猫のように俊敏な動きも出来ない人間の肉が「美味しいわけがない」。
話を聞きながら、他の生物を食べるという犠牲の上で成り立っている人間が、誰にも食べられず、(推測ではあるが)人間自身の舌にも合わないという事実は何だか納得いかない話しだと思う。
自然の力に飲み込まれるという事もあるにはあるが、それは人間以外の生物にもあり得るので。
だからといって、別に「人間も食べられるべし!」ということが言いたいわけではない。
ただ人間は、地球上で一番賢い動物のように考えがちだが、他の生物なしでは本当に生きてはいけないのだな、と痛感したりしたのである。
まぁ、人肉の味について語りながら食事をする環境ってどうかと思ったりするわけだが。